性交だけで罪になるのか?(東京都立川市の相談)
東京都立川市在住のAさんは,自宅にデリヘル嬢(21歳)を呼びました。
当初は正規のサービスを受けるつもりでしたが,デリヘル嬢から「プラス3万で本番いいよ」と言われたため,その日が給料日だったAさんはデリヘル嬢に3万円渡し,性交しました。
その後,Aさんはお店に関する掲示板を見たところ,「本番した客が逮捕された」との書き込みを見つけました。
Aさんは「自分も警視庁立川警察署に逮捕されるのではないか」と不安になって弁護士に無料法律相談を申込みました。
(フィクションです)
~ はじめに ~
風俗トラブルに発展する前段階として,Aさんのような悩みを持たれる方も多いかと思われます。
そして,あやふやな知識なまま,いざ相手方から「犯罪だ」「示談金を払え」などと言われると,その要求に従ってしまうというケースも少なくはありません。
そこで今回は,風俗トラブルでよくある性交,すなわち本番行為だけで罪となるかという点にスポットを当てて解説したいと思います。
~ 「性交」が規定されている犯罪(刑法編) ~
刑法上,「性交」という言葉が規定されている罪は「強制性交等罪」,「準強制性交等罪」,「監護者性交等罪」(それぞれ未遂罪も規定されている)の3つです。
このうち,風俗トラブルで関係する罪は「強制性交等罪」,「準強制性交等罪」ではないでしょうか。
そこで,この2つの罪について解説します。
= 強制性交等罪 =
強制性交等罪は,刑法177条に規定されています。
条文を確認しましょう。
刑法177条
13歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いて性交,肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という)をした者は,強制性交等の罪とし,5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し,性交等をした者も,同様とする。
これからすると,13歳以上の者に対しては「暴行又は脅迫」を用いて性交等をした場合にはじめて強制性交等罪で処罰されるということになります。
= 準強制性交等罪 =
準強制性交等罪は,刑法178条2項に規定されています。
刑法178条2項
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせて,性交等をした者は,前条の例による。
「心神喪失」とは,精神の障害によって正常な判断能力を失っている状態をいいます。
例えば,熟睡状態,泥酔状態,麻酔状態などがこれに当たります。
「心身を喪失させ」とは,故意に心身喪失状態にすることをいい,手段に制限はありません。
飲み物に睡眠薬を入れる,お酒を無理矢理飲ませる,麻酔の注射を打つなど様々考えられます。
= 結論 =
以上から,13歳以上の者に対しては,「暴行又は脅迫」あるいは「心神喪失,抗拒不能にさせる」手段がなければ犯罪は成立しないことが分かります。
また,13歳未満の者に対しては性交等のみで強制性交等罪が成立しますが,13歳未満の者が風俗店で働いていることはまず考えられないでしょう。
~ 「性交」が規定されている犯罪(特別法編) ~
「性交」を禁止している(規定している)法律は刑法以外ににもあります。
まず,各都道府県が定めている青少年の健全育成に関する条例(名称は各都道府県によって異なる)です。
しかし,条例の保護の対象としているのは青少年,すなわち18歳未満の者です。
次に,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律です。
しかし,この法律の場合も,保護の対象としているのは児童,すなわち18歳未満の者です。
その他,売春防止法がありますが,同法は,売春をした当事者を処罰法律ではありません。
~ おわりに ~
以上からすれば,
・暴行又は脅迫などの手段を用いた
・相手方が18歳未満であった
場合でない限り,性交しただけでは罪に問われないことがお分かりいただけたかと思います。
したがって,相手方から「被害届を出す」などと言われても,まずは落ち着いて対処することが必要です。
それでも態度が執拗な場合には,一度,弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
また,暴行や脅迫などの手段を用いた性交等でなかったとしても,疑いをかけられて刑事事件の被疑者となってしまうこともありえないことではありませんから,刑事事件化が不安である場合にも,まずは弁護士に話を聞いてみることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,風俗トラブルをはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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