街には数多くの風俗店が溢れています。各風俗店はそれぞれ様々なサービスを提供しています。
その中には、男性が男性に対して性的サービス行う内容のものもあります。そして、男女間で性的サービスを提供する風俗店同様、男性間で性的サービスを提供する風俗店でも、色々な法律的トラブルが少なからず発生しています。
一般的に誤解されがちなところですが、男性間でも、基本的には男女間での場合と同様のトラブルが起こり得ます。
2017年の刑法改正までは、強姦罪については女性のみが被害者になり得、女性器への男性器の挿入のみが処罰対象であったため、その他の性的行為については同罪の適用が行えませんでした。
しかし、この点についても法律の改正が行われ、今では男性間での肛門性交・口腔性交等をめぐるトラブルについても、非常に厳しい法律が関係してきます。
1 強制わいせつ罪
刑法176条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
強制わいせつ罪については、以前から、法律上も特に問題なく男性間に適用されました。
風俗店を利用した際に起こり得る強制わいせつトラブルとしては、風俗店・ボーイが了承していない性的プレイを無理矢理やらせたといったものでしょう。
多くの風俗店では、あらかじめ各ボーイが対応可能なプレイをHP上等で明記しています。さらに、ボーイの体調等に応じて実際サービスを行う時点では対応できないプレイがある可能性についても記載されていたりします。ボーイからサービスを受ける際に、もともとサービス内容に含まれていないような行為や、そのボーイが拒んでいるプレイを客の側が強制するようなことがあると、その点については強制わいせつ罪が成立する可能性があります。
さらに、強制わいせつ罪にあたる行為を行うに際し、ボーイに万が一怪我が発生するようなことがあれば、強制わいせつ致傷罪という、これまた非常に重い犯罪が成立してしまう可能性もあります。
刑法181条1項
第176条、第178条第1項若しくは第179条第1項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は3年以上の懲役に処する。
2 強制性交等罪
刑法177条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
以前は「強姦罪」として、女性器への男性器の挿入をもって成立する犯罪が規定されていました。最近の刑法改正により、新たに「強制性交等罪」として、被害者は女性に限定されず、処罰の対象となる行為に肛門性交や口腔性交も含まれることとなりました。
これにより、男性間の性的行為についても、相手の意に反してアナルプレイやフェラチオを強いることがあれば、強制性交等罪として処罰される可能性が出てきたのです。
風俗店によってはそもそもアナルプレイを禁止しているところもありますし、風俗店としては禁止していなくても各ボーイごとにアナルプレイの対応の可否が異なったりする場合もあります。
風俗店やボーイがアナルプレイを了承していないにもかかわらず、無理矢理ボーイの肛門に自身の男性器等を挿入するようなことをすれば、強制性交等罪が成立する恐れがあります。
フェラチオについても、そもそもそれが風俗店・ボーイの了承するところなのか確認が必要ですし、コンドームを装着した上でのフェラチオはOKだが、直接的なフェラチオはNGなど、その方法に制限がある場合もあります。そうした場合も、風俗店やボーイの意向に反して客側が勝手に好みのプレイを行うと、やはり強制性交等罪の成立の可能性が出てきます。
そして、強制性交等罪についても、相手に怪我が生じてしまった場合には、さらに重く処罰される可能性があります。
刑法181条2項
第百177条、第178条第2項若しくは第179条第2項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は6年以上の懲役に処する。
3 男性間で強制わいせつ事件・強制性交等事件を起こしてしまったら…
強制わいせつ罪にしても強制性交等罪にしても、他の犯罪と比較しても極めて重い刑罰が規定されている犯罪類型です。ひとたび捜査機関が捜査を開始すれば、早い段階で逮捕・勾留され、その後も身体拘束が長期化し、最終的にも重い刑罰が科される可能性があります。
強制わいせつ罪も強制性交等罪も、最近の刑法改正により、依然とは異なり、「親告罪」ではなくなりました。被害者らの告訴が無くても裁判にかけられる犯罪となったのです。しかし、被害者となる相手男性との間で示談・和解が成立することは、身体拘束の有無・長さや最終処分との関係で非常に大きな意味を持ちます。
示談・和解の成立は、身体拘束の回避や身体拘束からの解放に直結することも多く、最終処分との関係でも、示談・和解が調った結果裁判にならずに済むということも充分に考えられます。
風俗店を利用して男性間で強制わいせつ・強制性交等トラブルを起こしてしまたら、早急に弁護士に相談し、相手の男性への対応を始めることが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に特化した活動を行っています。風俗トラブル事案についても、多くのご相談を受け付けています。男性間での性的トラブルについてのご相談も少なくありません。
風俗店を利用して男性間で性的トラブルが発生してしまったら、まずは一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。