職業安定法と略式裁判

職業安定法と略式裁判

職業安定法略式裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

東京都葛飾区に住むAさん(20歳)は、出会い系サイトで17歳の女子高生になりすまして援助交際希望の男性を募集し、男性にAさんの妹Vさん(16歳)やVさんの友人を紹介していました。
そして、Aさんは、Vさんらが受け取ったお金の3分の2を自分のものとし、合計約80万円ほど稼いでいました。
そうしたところ、Aさんは警視庁亀有警察署職業安定法違反で逮捕されてしまいました。
援助交際をした男性が児童買春の罪で逮捕されたことがきっかけで、本件が発覚したようです。
Aさんが逮捕されてしまったと聞いたAさんの家族は、刑事事件専門の弁護士に接見を依頼しました。
(フィクションです)

~ 職業安定法 ~

職業安定法63条には次の定めがあります。

職業安定法63条
次の各号のいずれかに該当する者は、これを1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処する。 
2号 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行った者又はこれらに従事した者

公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務(有害業務)」とは、社会一般の道徳観念に反する業務をいい、労働者保護、善良な風俗の保護という観点から判断されますが、18歳未満の児童を援助交際に応じさせること、は「有害業務」に当たるといってよいでしょう。
また、Aさんが男性にVさんらを紹介することは「労働者の供給」に当たる可能性があります。
なお、Vさんらが「労働者」に当たるか否かは、名目にとらわれず、勤務時間・場所、拘束の有無、使用者の指揮命令下にあるか否かなど実際の状況から判断されるものと思われます。

事例のように、援助交際への労働者供給は、児童買春などから発覚するパターンも多く、発覚すれば関係者も多数に上ることなどから逮捕・勾留される可能性が高いと思われます。
しかし、職業安定法違反は、上記のとおり罰金刑が定められています。
罰金刑を受けるには略式裁判に応じる必要がありますが、略式裁判を受けると以下のメリットがあります。

~ 略式裁判 ~

略式裁判は、公開の法廷に出頭する必要がなく、裁判官が書面だけで審理を行う裁判のことをいいます。
国民には通常の裁判を受ける権利が認められていますから、略式裁判をするには、被疑者の同意が必要です。
ここで、略式裁判を受けるメリットとしては、

1 懲役刑を受けるおそれがない(略式命令では100万円以下の罰金又は科料の刑の命令しか出せない)
→将来、刑務所で服役するおそれがなくなる

2 公開の法廷に出廷する必要がない
→会社を休む必要がない(通常の日常生活を送れる)、裁判を他人の目に晒されることはない(事件を秘密にできる)

などといった点が挙げられます。
略式裁判は通常の裁判手続を省略する裁判であり、略式裁判を受けるということはかかっている容疑を認めるということになります。
ですから、容疑を否認する場合は、略式手続に応じてはいけません。
通常の裁判で事実を争う必要があります。

略式裁判のそのほかのメリットとしては、略式命令が出た時点で釈放されるという点も挙げられます。
例えば、勾留中の場合、勾留期間9日目で検察官により略式起訴されたとしましょう。
その場合、通常、その日に裁判官による略式裁判が行われ(先ほども申しましたように裁判への出廷の必要はない)、略式命令をすることができないこと、略式命令をすることが相当でないこと以外は、その日に略式命令が出されます。
略式命令が出されると勾留状の効力が失効するとの規定があります(刑事訴訟法345条)から、その時点で釈放されるのです。

略式裁判にはこのように、メリットもあればデメリットもあります。
刑事事件で被疑者となってしまったら、略式裁判を利用できる見込みのある罪なのか、略式裁判のメリットデメリットは何なのか等を弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。
専門のスタッフが24時間体制で、初回接見サービス、無料法律相談の予約を受け付けております。

 

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