お店への「罰金」は支払う必要がある?
会社員のAさんはさいたま市浦和区のソープランドに行き,撮影のオプションがないVさんを指名しました。
そして,AさんはVさんからサービスを受けている最中,Vさんやお店の許可なく,サービス中のVさんを撮影しました(盗撮)。
そのとき,Vさんは洋服,下着を全て脱いだ状態でした。
ところが,サービス途中,Vさんが個室の片隅に小型カメラが設置してあるのを発見しました。
AさんはVさんから中身を見せるよう問いただされ,やむなくVさんに見せると,Vさんの裸やAさんにサービスをしているVさんの姿が映っていました。
Aさんは,Vさんから「お店に報告する」と言われました。
そして後日,Aさんはお店の店長から100万円の罰金を請求されてしまいました。
(フィクションです)
~ はじめに ~
いわゆるソープやデリヘルのような風俗では,本番行為,盗撮,薬物使用,暴力行為,スカウト行為などが禁止事項とされていることが多いようです。
そして,禁止事項を破り,そのことが店側に露見したら,店から「罰金」の支払いを求められるというケースはよく目にしたり,耳にしたりすることがあるかと思います。
ところで,この「罰金」とは法的にはどんな性質のものなのでしょうか?
そして,支払う必要があるのでしょうか?「罰金」の支払を求められた方からすれば,「悪いことをした」などという負い目から,ただなんとなく「支払わないといけない」という気持ちに陥ってはいませんか?
そこで,今回は,この罰金の法的性質や刑事事件における「罰金」との違いなどについて解説いたします。
~ お店から求められる「罰金」の性質 ~
風俗店を利用した場合,お客は,通常,お店と風俗利用の「契約」をしていると考えられます。
そして,その契約違反があった場合(今回でいえば,お客が禁止事項を破った場合)にお店はお客に対し損害額を請求することができます。
お店は予め「~~したら●●円払え」と予告しているのですから,これは賠償額の予定,つまり違約金(民法420条3項)と解されています(お店側からの「罰金」請求=「違約金」の請求=損害額の予定)。
そして,「違約金」は損害額についての証明がなくても請求することができると考えられています。
* 風俗嬢に対する慰謝料 *
盗撮が風俗嬢に対する不法行為ということになれば,風俗嬢に対して慰謝料を支払う必要が出てきます。
その場合の根拠は,民法710条によります。
* 高額な金額は無効 *
以上から,お店に対しても賠償額(いわゆる罰金)を支払う必要はありそうですが,あまりに高額な請求は公序良俗に反し「無効」とされる場合もありますから,相手の要求を鵜呑みにする必要もありません。
~ 刑事事件における「罰金」 ~
こういった風俗店の「罰金」に対して,刑事事件における「罰金」は,あくまで犯罪を犯した人に対する制裁的意味合いを持つものです。
また,刑事事件における「罰金」はお店に支払うものではなく,あくまで国の機関,つまり検察庁に納付し,最終的には国庫に帰属します。
先ほど挙げた風俗店でよく定められている禁止事項の中にも,刑事事件となれば罰金や科料が規定されているものもあります。
たとえば,盗撮行為やスカウト行為であれば,各都道府県が定める「迷惑行為防止条例」に罰金(及び懲役),軽犯罪法に科料の規定が設けられています。
また,暴力行為であれば,刑法の暴行罪,傷害罪などに罰金(及び懲役)の規定が設けられています。
さらには,刑事事件となって有罪となった場合には罰金や科料では済まないものもあります。
本番行為であれば,刑法の強制性交等罪(5年以上の有期懲役)などに,薬物使用であれば,覚せい剤取締法の使用の罪(10年以下の懲役)などに当てはまることが考えられます。
ここまでくると,刑務所に服役する必要も出てきますから,やはり,風俗店の禁止事項に当たる行為はしないことに越したことはありません。
万が一,禁止事項に当たる行為をしてしまって風俗トラブルに巻き込まれ,刑事事件化が心配な場合には,すぐに弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,風俗トラブルをはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りの方は,まずはお気軽に0120-631-881までご連絡ください。
(埼玉県浦和警察署までの初回接見費用:35,900円)