店長が風俗嬢に客の財布を盗ませたら?

店長が風俗嬢に客の財布を盗ませたら?

横浜市保土ヶ谷区で無店舗型風俗店(デリヘル)を営む店長であるAさん(28歳)は、従業員の風俗嬢Bさん(20歳)から「お金で困っている」との相談を受けました。
Aさんは少年時代に他人の財布を万引きした前歴を有していたことから、Bさんに「お金に困ってるならお客の財布を盗んだら?」「シャワー中が一番盗りやすいよ」と言いました。
そこで、BさんはVさん宅でVさんにサービスを提供した後、Vさんが一人でシャワーを浴びている最中にVさんのバッグの中から財布を抜き取りました。
BさんはVさん宅を退出した後財布の中身を確認したところ、財布の中には1万円札5枚が入っていたためこれを抜き取り財布はその場に捨てました。
ところが、後日、Bさんは神奈川県保土ヶ谷警察署窃盗罪で、Aさんは窃盗罪の教唆犯で逮捕されました。
VさんがBさんが退出直後に財布がなくなっていることに気づき、神奈川県保土ヶ谷警察署に被害届を提出したことが逮捕のきっかけとなったようです。
(フィクションです)

~財布を盗んだBさんの罪は?~

Bさんが窃盗罪に問われることは明らかでしょう。
窃盗罪は刑法235条に規定されています。

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

~財布を盗むよう提案したAさんの罪は?~

Aさんは直接にはVさんの財布を盗んだわけではありません。
しかし、直接犯行に関与していなくても罪に問われることがあります。
それが共犯の場合です。

共犯は①他人と意思疎通して協力しあって犯罪を実現する「共同正犯」、②人を唆して他人に犯罪を実現させる「教唆犯」、③他人の犯罪の実現を容易にするため手助けする「幇助犯」の3つに区分されます。
今回、Aさんは②の教唆犯に問われているようです。

~教唆犯とは~

教唆とは、まだ犯罪に対する実行の決意をしていない他人(今回の場合、Bさん)を唆して、犯罪実行の決意を生じさせることをいいます。

教唆犯は刑法61条1項に規定されています。

刑法61条
人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。

教唆が成立するには、

・人を教唆すること
・それに基づいて被教唆者が犯罪を実行すること

の2つの要件がそろうことが必要です。

教唆犯は、自ら犯罪を実行した者(正犯者(今回の場合、Bさん)といいます)と同様の地位にあることから、教唆犯にも正犯者と同様の刑を科すとされています。
教唆は、特定の犯罪の実行を決意させるに足りるもでなければなりませんから、単に「やってこい」とか「殺人をせよ」などと漠然と言っても教唆には当たりません。

~幇助犯、間接正犯とは~

幇助とは実行行為以外の行為をもって正犯を援助し、その実行行為を容易にすることをいいます。
幇助は、すでに犯罪実行の決意のある者の犯行を容易にする点が教唆と異なるところです。
そのため、正犯者より責任が軽いと考えられており、幇助犯の刑は正犯の刑を減軽する(必要的減軽)とされています(刑法63条)。

幇助犯が成立するには、

・人を幇助すること
・被幇助者が犯罪を実行すること

の2つの要件がそろうことが必要です。
AさんがBさんが財布を盗むことをしりつつ、被害者宅まで車で送り迎えした、などという場合は幇助犯となる可能性もあります。

他方、間接正犯とは、間接的に正犯を実行する、つまり人を道具として使って犯罪を実行することをいいます。
たとえば、Aさんに暴力を振るうなどしてBさんを抵抗できない状態にし、Bさんを使って財布を盗ませた、という場合は、間接正犯となる可能性もないわけではありません。
間接正犯も正犯と刑責は同じですから、減軽事由などはありません。
窃盗罪の正犯と同じく、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金を科せられる可能性があります。

複数の人が犯罪に絡んだ共犯事件では、そもそもどういった種類の共犯にあたるのか、その共犯がどういった刑罰を受けるのかといった部分が複雑で分かりづらいところです。
共犯の窃盗事件の当事者となってしまったら、まずは刑事事件のプロである弁護士に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
共犯の窃盗事件にお困りの際は、お気軽に0120-631-881までお電話ください。
専門のスタッフが24時間体制で、初回接見サービス、無料法律相談の予約を受け付けております。

 

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