1 「貢ぎ」と贈与
性風俗店において利用客が風俗嬢に金銭やブランド品を貢いだり、ホストクラブで客がホストにそうした物を貢いだり、ということはよく見られることです。
こうした「貢ぎ」は、客が、風俗嬢やホストに対する慰労やお礼の気持ちを示すためや、自分に対するサービスの質をアップさせるため、その風俗嬢やホストの興味を惹いて独占するため、等々から行われることが多いでしょう。これは、客の側が自発的に行うのであれば、通常は「贈与」として、とくに法律上も問題視されることはないでしょう。
民法第549条
贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
2 「貢ぎ」と詐欺
しかし、風俗嬢やホストへの「貢ぎ」は、ときに、客側の自発的なものではなく、風俗嬢やホストが言葉巧みに客をだまして行わせる場合があります。
サービス業の一環として、風俗嬢やホストが多少のビッグマウスを用いることや、客を良い気にさせるために話を持ったりすることは許されるとしても、度を過ぎた客側への見返り要求や金銭援助の要求は、詐欺罪に当たる可能性もあります。
刑法第246条
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
たとえば、風俗嬢やホストが、客に対し、その気もないのに、個人的な真剣交際を約束したり結婚をチラつかせたりして、その条件として金銭の支払いや貸与を行わせるような場合があります。
客の側もリップサービスであることを承知しての上であれば良いものの、客の方は本当に交際や結婚の約束を信じて金銭等を支払った場合、風俗嬢やホストの側がその約束を反故にして当事者間でもめると、詐欺事件として事件化されていく可能性があります。
詐欺罪については、その立証が難しいのもあって、最終的にしっかり立件されるかどうか最後まで微妙なケースも多いですが、ひとたび客側が被害の声を上げると、警察による捜査がスタートする可能性は大いにあります。
そして、詐欺罪は決して軽い犯罪ではないため、刑事事件として立件されて刑事手続きが進行していくと、身体拘束等厳しい対応もあり得、最終処分も厳しいものとなり得ます。
3 客から「詐欺」と訴えられたら
自分に付いていた客から、「騙されて貢がされた」などと詐欺被害を訴えられたら、まずは早急に弁護士に相談するのが良いでしょう。
警察が介入する前であれば、当事者間で事を大きくすることなく収めることもできるかもしれません。しかし、当事者同士での話し合いでは、感情的になって協議がままならなかったり、一度は話がまとまっても後々再度争いが蒸し返されたりといったことが起こり得ます。法律の専門家である弁護士が間に入ることで、冷静な話し合いができ、確実な最終解決が期待できます。
風俗嬢・ホストの側が本当に詐欺行為を働いたのであれば、客側に対し、金銭や物品の返還、さらにそれに加えて示談金の支払い等を行って許しを請い、刑事事件化させることなく当事者間での解決を目指すことになります。
一方、風俗嬢・ホストの側には騙す意図が無かったという場合や、客の側の不当な言いがかりのケースでは、弁護士が事の経緯を詳細に調査・分析し、詐欺罪が成立しないことの証明に向けて活動することになります。
詐欺罪については、それが成立するためにはいくつかの厳しいハードルがあります。法律の専門家である弁護士が、しっかりとポイントを押さえ、そのハードルを越えられないこと=詐欺罪不成立であることを主張していくことになります。
詐欺罪は、他の犯罪に比較しても、その構造や成立条件が難解であるため、法律のプロである弁護士が間に入って対応することがより重要になってきます。
ご自身のお客さんから詐欺被害を訴えられてしまったら、出来るだけ早く、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。刑事事件・少年事件に特化した弊所の弁護士が、豊富な刑事事件経験をもとに、迅速・的確な弁護活動を行います。