【報道解説】医師がデリヘル従業員のマイナンバーカードを盗んで逮捕

【報道解説】医師がデリヘル従業員のマイナンバーカードを盗んで逮捕

風俗店従業員の金品や所持品などを盗んで窃盗の疑いで逮捕された刑事事件を紹介し、その刑事責任について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

性風俗店の従業員からマイナンバーカードなどを盗んだとして、兵庫県警姫路署は28日、窃盗の疑いで、姫路市の医師の男(52)を逮捕した。
逮捕容疑は27日午後9時40分ごろから11時ごろまでの間、同市内のホテルで、デリバリーヘルス(派遣型性風俗店)のアルバイト女性(29)から、マイナンバーカードと健康保険証を盗んだ疑い。
調べに対し『盗んでいません。触っていません』などと容疑を否認している。
同署によると、28日朝、女性の夫から『妻がマイナンバーカードを盗まれた』と110番があり発覚。
男を警察官が発見し調べたところ、男がカードを所持していたという。」

(令和4年8月28日に神戸新聞NEXTより配信された報道より引用)

【他人の身分証を盗むと窃盗罪に問われ得る】

刑法235条は「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪」と規定しています。

ここでいう「財物」に当たるというためには、財布や金銭そのものといった財産的な価値を有する物でなければならないと考えられています。

そうすると、今回逮捕された医師が盗んだとされる免許証やマイナンバーカードは、それ自体に財産的な価値があるのかと疑問に思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、免許証やマイナンバーカードといった身分証の類はそれが盗まれてしまうと何らかの形で悪用されるおそれがありますので、そのような他人の手に渡った際に悪用の恐れのある物も消極的価値があるとして、「財物」に当たると考えられています。

実際に、東京地方裁判所昭和39年7月31日判決は、失効した免許証について「財物」に当たると判断しています。

【窃盗事件の場合はどのような目的で盗んだのかが重要に】

窃盗罪に問われるかどうかの判断に当たっては、犯人がどのような目的で被害品を盗んだのかということが非常に重要になります。
というのも、刑法235条には明記されていませんが、窃盗罪が成立するためには、犯人に不法領得の意思があることが必要になり、不法領得の意思が認められない場合には窃盗罪が成立しないことになるからです。

不法領得の意思とは、「権利者を排除して他人の財物を自己の所有物として、その経済的用法に従い利用・処分する意思」のことをいいますが、このうち、前半の「権利者を排除して他人の財物を自己の所有物」として振る舞う意思のことを権利者排除意思、後半の「経済的用法に従い利用・処分する意思」のことを利用処分意思といい、この2つの意思が認められると不法領得の意思があると判断されることになります。

権利者排除意思は、他人の自転車をほんのわずか使用したような軽微な一時使用を窃盗罪として処罰しないようにする機能があり、利用処分意思は、窃盗罪器物損壊罪などの毀棄隠匿罪とを区別するための指標になり、裁判実務上、利用処分意思については広く解釈されていて、盗んだ財物から何らかの効用を享受する意思があればよいと考えられています。

今回のようなケースでは利用処分意思が問題になる可能性が考えられます。

そうすると、どのような目的で盗んだ場合に利用処分意思が認められるかということですが、例えば、運転免許証やマイナンバーカードを悪用して偽造するといった目的の場合や、運転免許証やマイナンバーカードからその人の氏名や住所を知るために盗んだという場合は利用処分意思が認められる結果、不法領得の意思が認められることになるでしょう。

そして、このようにして窃盗罪が成立した場合、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

なお、運転免許証やマイナンバーカードを純粋に嫌がらせ目的で持ち去ったという場合には、利用処分意思が認められない結果、不法領得の意思がないと判断されて、窃盗罪ではなく器物損壊罪(刑法261条)が成立する可能性があります。
器物損壊罪は親告罪で、その法定刑は3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料となっています。

【窃盗事件で捜査を受けてお困りの方は】

刑事裁判においては、窃盗事件が起きた日時・場所に近いところで被害品を所持していた人は窃盗犯人であると推定されるという考え方があります。
報道では、被害女性の夫が警察に通報したのが28日の朝で、被害女性が逮捕された医師とホテルでサービスを提供していた時間が27日の午後9時40分ごろから11時頃まであるということが読み取れますが、このような状況で逮捕された医師が被害女性のマイナンバーカード等を所持していたとのことですので、逮捕された医師が窃盗犯人であると一定程度推定されてしまうことになるしょう。

もっとも、被害女性のマイナンバーカード等が何らかの理由で偶然、逮捕された医師のカバンや着衣のポケットに紛れ込んでしまったなどの可能性もありますので、この推定は絶対のものではありません。
実際に、逮捕された医師は容疑を否認しているようですので、やってもいない罪を着せられることを避けるためには弁護士に相談されることをお勧めします。

警察に逮捕された後の取り調べでは、最初から犯人であると決めつけられたり、やってもいないこうをやったかのような誘導をなされる場合があり、こうした困難に耐え切れずにやってもいない罪を自白してしまうおそれがあります。
このような取り調べ対応については、いち早く弁護士からアドバイスを受けることが重要になると考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
利用したデリバリーヘルスの従業員から窃盗の疑いをかけられ警察の捜査を受けてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

 

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