風俗店に紹介して職業安定法違反

風俗店に紹介して職業安定法違反

大阪府岸和田市に住む大学生のA君(21歳)は、小遣い銭稼ぎのため、友人からの紹介で、大阪府岸和田市内の駅周辺で風俗店に女性を紹介するスカウトのアルバイトをしていました。
そうしたところ、A君は、私服警戒中の大阪府岸和田警察署の警察官に「君、さっき、女の子を風俗店に紹介したよね?」「それって職業安定法にひっかかるから警察署まで来てもらうよ」などと言われ、大阪府岸和田警察署への同行を求められて事情を聴かれることとなりました。
A君は、取調べ担当の警察官に、「私が紹介した風俗店は優良風俗店と聞いていました。」「だから職業安定法で検挙されたことには納得がいきません。」というと、警察官から「風俗店が優良であろうが不良であろうが関係ないのよ。」と言われてしまいました。
それでも納得がいかなかったA君は、供述調書へのサインを保留し、風俗事件に強い弁護士に無料法律相談を申込みました。
(フィクションです)

~ 本件で問題となっている行為は? ~

本件で問題となっているA君の行為(女性を風俗店に紹介すること)は、職業安定法63条2号に抵触するおそれがあります。

職業安定法63条
次の各号のいずれかに該当する者は、これを1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処する。
1号 略
2号 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行った者又はこれらに従事した者

「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」については後で詳しくご説明いたします。
なお、風俗嬢が「労働者」といえるかどうか疑問に思われる方がいるかもしれません。
しかし、「労働者」に当たるかどうかは、名目にとらわれず、勤務時間や場所が拘束されているか、専属性の有無、使用者の指揮命令下にあるか否かなど実際の状況から判断されます。風俗嬢も、多くの場合は「労働者」に当たると思われます。
また、「職業紹介」は、職業安定法4条1項で、「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすることをいう」とされています。
「労働者の募集」は、同条5項で、「労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人に委託して、労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘すること」、「労働者供給」とは、同条7項で、「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させること(以下、略)」とされています。
A君の行為は、「職業紹介」あるいは「労働者供給」に当たる可能性が高いかと思います。

~ 「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」とは ~

本件で一番問題となっているのは、A君が女性を紹介した紹介先の優良とされている風俗店が「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務かどうか」という点です。
この点、公衆衛生上有害な業務とは、国民の健康の維持増進にとって危害を及ぼすおそれのある業務、公衆道徳上有害な業務とは、社会共同生活において守らなければならない道徳に反し、社会の善良な風俗を害するおそれのある業務をいうとされています。
そして、これらの観点から、裁判所(神戸地方裁判所 平成14年7月16日)は、性風俗店が風営法所定の届出を出しており、風営法所定の規制に違反しないいわゆる「優良風俗店」であったとしても、職業安定法上の「公衆道徳上有害な業務」に該当しないことにはならないとしています。
その理由としては、風俗は客とお互い全裸になった上で手淫、口淫等の性交類似行為などを行うことをサービスとする業務であり、社会一般の通常の倫理,道徳観念に反して社会の善良な風俗を害する「売春」と実質的に異ならないこと、を挙げています。

売春を行っている風俗店はもちろん、AV撮影なども「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」に当たりますから注意が必要です。

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