風俗店から身に覚えのない示談金を要求
~ケース~
Aさんは、京都市北区内のラブホテルにデリヘル嬢を呼び、サービスを受けました。
Aさんが見た風俗店のホームページには明確に「本番禁止」の旨が記載されていましたが、Aさんはホテルにやってきたデリヘル嬢に本番行為ができないか、と持ちかけました。
デリヘル嬢はAさんの求めを拒否したので、Aさんはこれに従い性交をせずにプレイを終えました。
その後、Aさんの携帯に風俗店から電話があり、「女の子が無理矢理されそうになったと言っている。示談金として300万円を払え。払えないなら京都府北警察署に行くぞ」と言われ、大変困惑しています。
(フィクションです)
~Aさんが仮に「無理矢理」していたとしたら…~
今回の事例で、仮にAさんがデリヘル嬢の拒否に従わず、無理矢理性交をしていれば、強制性交等罪あるいはその未遂罪が成立する可能性が高いと思われます。
強制性交等罪に関する刑法の条文は次の通りです。
刑法第177条「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする」(強制性交等罪)
刑法第180条「第176条から前条までの罪の未遂は、罰する」(未遂犯処罰規定)
本罪にいう「暴行」「脅迫」に該当するには、相手方の反抗を抑圧する程度のものであることを必要とせず、その反抗を著しく困難ならしめる程度のものであれば足ります(最高裁昭和24年5月10日判決)。
そのため、13歳以上の女性と単に性交しただけで強制性交等罪が成立することはありません(ただし、性交の相手方が18歳未満であれば青少年健全育成条例違反の罪、18歳未満の相手方に対価を与えて性交すれば、児童買春の罪が成立します)。
なお、13歳未満の者と性交等した場合は、暴行、脅迫によらなくても、強制性交等罪を構成することになり、同意があった場合も強制性交等罪となります。
~Aさんは無理矢理やっていないが…~
Aさんはデリヘル嬢に暴行、脅迫を用いて性交等をしておりませんから、Aさんに強制性交等罪が成立することはありません。
Aさんは本番行為を持ちかけてはいますが、暴行に該当することはありませんし、「本番できないか?」と申し向けたことが「脅迫」と評価されることはおそらくないでしょう。
持ちかけた程度では性交等に向けた行為にも手をつけておらず、未遂にもなりません。
(ではなぜ風俗店は示談金を要求してきたのか)
デリヘル嬢の思い違いや、何らかの理由によりプレイ当時の話を脚色、誇張して風俗店に報告したということが考えられます。
悪質なケースでは、勘違いではなく、わざと存在しない強制性交等罪の被害を作り上げ、示談金を要求する場合も考えられます。
(示談金の要求にどう対応するか)
示談交渉を当事者自ら行うことは法律上禁止されていませんが、Aさんが自ら風俗店と交渉することはおすすめできません。
風俗店とのトラブルに巻き込まれた場合、しばしば高圧的、威圧的な示談金の要求が行われます。
要求に耐え切れなくなり、身に覚えのない被害に対して金銭を支払ってしまうおそれがあります。
また、要求される金額も多くの場合高額です。
さらに、金銭を支払うと、過剰な要求にも応える人間であると思わせしまい、さらに要求をエスカレートさせるおそれもあります。
本件の場合は、Aさんも身に覚えがないことであり、より交渉をどのように行えばよいのか難しいと感じるかもしれません。
一方で、弁護士が入ったとわかっただけで要求を撤回したり、金額を下げてくることもあります。
法律の専門家である弁護士に、Aさんと風俗店の間に立ってもらい、交渉の窓口とすることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所であり、刑事事件に発展するおそれのある風俗トラブルについても対応可能です。
利用した風俗店から、身に覚えのない示談金を要求され刑事事件化が不安だという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
(初回相談は無料です。相談のご予約は0120-631-881まで)