風俗トラブルに関する法律・条例

※2025年6月1日より、改正刑法に基づき懲役刑および禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されました。
当ページでは法改正に基づき「拘禁刑」と表記していますが、旧制度や過去の事件に関連する場合は「懲役」「禁錮」の表現も含まれます。

本ページでは、風俗トラブルに関する法律や条例を挙げて、説明します。

 

風俗トラブルに関する法律

風俗トラブルに関する法律としては、下記のものが挙げられます。

  • 不同意性交等罪(旧 強制性交等罪、旧 強姦罪)
  • 不同意わいせつ罪(旧 強制わいせつ罪)
  • 児童買春・児童ポルノ禁止法
  • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)
  • 出会い系サイト規制法

 

風俗トラブルに関する条例

風俗トラブルに関する条例としては、下記のものが挙げられます。

  • 青少年の健全な育成に関する条例
  • 迷惑防止条例
  • ぼったくり防止条例

 

風俗トラブルに関する事例と法律の説明

【被害者がいる風俗トラブルに関する犯罪】

1 不同意性交等罪(旧 強制性交等罪、強姦罪)

例えば、「デリバリーヘルス嬢のから性的サービスを受けたが、自己の性欲を満たすため、本番行為を拒否するデリヘル嬢を暴行し性交した。」という場合が挙げられます。

過去には「 強姦罪」とされ、法改正により「強制性交等罪」として、暴行または脅迫を用いて「性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)」することを処罰の対象としていました。

令和5年の刑法改正により、一定の行為や事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣ちつ若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者を処罰の対象としすることになりました。

一定の行為や事由については、次のように定めています。

一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。

二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。

三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。

四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。

五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。

六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。

七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。

八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

法定刑は5年以上の有期拘禁刑です。

 

2 不同意わいせつ罪(旧 強制わいせつ罪)

例えば、「キャバクラで嫌がるお店の女の子に無理やりキスをしたり、お尻や胸などを触るなどして、お店から『わいせつ行為したことで訴えるぞ!』と言われた。」という場合が挙げられます。

不同意わいせつ罪は、一定の行為や事由により(不同意性交等罪において掲げたものと同様)、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為(被害者の性的羞恥心を害する行為)をする場合をいいます。

法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑です。

 

3 児童買春・児童ポルノ禁止法

金銭を払って18歳未満の児童と性交に及べば、児童買春・児童ポルノ禁止法違反が成立します。なお、相手の年齢が18歳未満であり、かつ行為時にその事情を知っていた必要があります。

法定刑は、5年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金です。

 

被害者がいる風俗トラブルに関する犯罪の弁護活動

1 示談

被害者と示談を行い、軽い処分を目指します。

 

2 取調対応・身柄解放活動

弁護士が接見に赴き、嘘の自白調書やニュアンスが違った調書が作成されないようアドバイスします。

また、逮捕・勾留されてしまうのは、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるためです。そこで、弁護士は早期釈放・早期保釈のために証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを示す客観的証拠を収集し、社会復帰後の環境を整備するなどして釈放や保釈による身柄解放を目指します。

 

3 調査と処分交渉

否認事件では、独自に事実調査を行うとともに、不起訴に向けて検察官に働きかけを行います。

 

4 公判準備活動

少しでも有利な処分(例えば「執行猶予」)を獲得できるように活動します。

また、否認事件では、冤罪を防止すべく被害者の方に記憶違いがないかの検証・弾劾活動及び弁護側独自で有利な証拠を収集・提出できるよう活動します。

 

【被害者がいない風俗トラブルに関する犯罪】

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法又は風適法)

特定の種別の営業(例えばファッションヘルス、ソープランド等)について、これを「性風俗関連特殊営業」と定義し、風俗営業とは異なり届出制としています。例えば、届出書を提出せずに店舗型性風俗特殊営業を営めば、6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金の併科となります。

営業種別としては、下記のものがあります。

 

(店舗型性風俗特殊営業)

【1号営業】

浴場業の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業 

EX.ソープランド等

 

【2号営業】

個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業 

EX.ファッションヘルス等

 

【3号営業】

専ら性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態をみせる興行その他の善良の風俗又は少年の健全な育成に与える影響が著しい興行の用に供する興行場

EX.ストリップ劇場・個室ビデオ等

 

【4号営業】

専ら異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む)を設け、当該施設を当該宿泊に利用させる営業

EX. ラブホテル・モーテル等

 

【5号営業】

店舗を設けて、専ら、性的好奇心をそそる写真、ビデオテープその他の物品のうち政令で定めるものを販売し、又は貸し付ける営業

EX. アダルトショップ等

 

【6号営業】

前各号に掲げるもののほか、店舗を設けて営む性風俗に関する営業で、善良の風俗、清浄な風俗環境又は少年の健全な育成に与える影響が著しい営業として政令で定めるもの

EX. 出会い系喫茶等

 

(無店舗型性風俗特殊営業)

【1号営業】

人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの

EX.デリヘル等

 

【2号営業】

電話その他の国家公安委員会規則で定める方法による客の依頼を受けて、専ら、前項第5号の政令で定める物品を販売し、又は貸し付ける営業で、当該物品を配達し、又は配達させることにより営むもの

EX.アダルトビデオ等通信販売等

 

(映像送信型性風俗特殊営業)

専ら、性的好奇心をそそるため性的な行為を表す場面又は衣服を脱いだ人の姿態の映像を見せる営業で、電気通信設備を用いてその客に当該映像を伝達することにより営むもの。

EX.アダルト画像通信販売等

 

(店舗型電話異性紹介営業)

店舗を設けて、専ら、面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際を希望する者に対し、会話の機会を提供することにより異性を紹介する営業で、その一方の者からの電話による会話の申込みを、電気通信設備を用いて、当該店舗内に立ち入らせた他の一方の者に取り次ぐことによって営むもの

EX.テレクラ等

 

(無店舗型電話異性紹介営業)

専ら、面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際を希望する者に対し、会話の機会を提供することにより異性を紹介する営業で、その一方の者からの電話による会話の申込みを、電気通信設備を用いて、他の一方の者に取り次ぐことによって営むもの

EX.ツーショットダイヤル等

 

なお、性風俗関連特殊営業に関しての罰則の例は下記のとおりです。

無届営業 6ヶ月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(併科あり)
店舗型に係る営業所の禁止区域等営業 5年以下の拘禁刑又は1000万円以下の罰金(併科あり)
18歳未満の者を風俗営業等において従事させること・客とすること 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(併科あり)
広告制限区域等における看板の設置 100万円以下の罰金
客引き(「立ちふさがり、つきまとい行為」も含む)

6ヶ月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金

(併科あり)

店舗型・無店舗型性風俗特殊営業の無届業者による広告宣伝  100万円以下の罰金
外国人ホステスの就労資格の確認義務懈怠 100万円以下の罰金

 

出会い系サイト規制法

出会い系サイトを利用して児童(18歳未満)を性交等の相手方となるように誘引する行為等の禁止、出会い系サイトに対する必要な規制をすること等により、出会い系サイト利用に起因する児童買春その他の犯罪から児童を保護し、もって児童の健全な育成に資するために設けられました。

 

≪出会い系サイトとは≫

この法律では、出会い系サイト事業を「インターネット異性紹介事業」と呼んでいます。ここで、「インターネット異性紹介事業」とは、以下の4要件を満たす事業をいいます。

面識のない異性との交際を希望する者(異性交際希望者といいます。)の求めに応じて、その者の異性交際に関する情報をインターネット上の電子掲示板に掲載するサービスを提供していること。

 異性交際希望者の異性交際に関する情報を公衆が閲覧できるサービスであること。

インターネット上の電子掲示板に掲載された情報を閲覧した異性交際希望者が、その情報を掲載した異性交際希望者と電子メール等を利用して相互に連絡することができるようにするサービスであること。

有償、無償を問わず、これらのサービスを反復継続して提供していること。

 

≪出会い系サイトを利用する方に関する事項≫

出会い系サイトの掲示板に児童を性交の相手方とする交際を求める書き込みをした人や児童を相手方とする金品を目的とした異性交際を求める書き込みをした人は、処罰の対象となります(100万円以下の罰金)。

 

≪出会い系サイトを運営する方に関する事項≫

出会い系サイトを運営する方は、届出、利用者が児童でないことの確認、禁止誘引行為に係る書き込みの削除等の義務があります(30万円以下の罰金)。

 

被害者がいない風俗トラブルに関する犯罪の弁護活動

1.不起訴処分の獲得

弁護士は、不起訴処分を獲得するため、容疑者の方が事件に関与していない・事件に関与していたがその程度、悪質性が弱いなどといった事情を検察官に主張・立証します。

容疑者を起訴して刑事裁判にかけるか否かの判断は、全て検察官にゆだねられています。

そのため、不起訴処分の獲得では、弁護士を通じていかに検察官を説得するかが重要になります。

 

2.取調対応・身柄解放活動

弁護士が接見に赴き、嘘の自白調書やニュアンスが違った調書が作成されないようアドバイスします。

また、逮捕・勾留されてしまうのは、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるためです。そこで、弁護士は早期釈放・早期保釈のために証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを示す客観的証拠を収集し、社会復帰後の環境を整備するなどして釈放や保釈による身柄解放を目指します。

 

3 調査と処分交渉

否認事件では、独自に事実調査を行うとともに、不起訴に向けて検察官に働きかけを行います。

 

4.公判準備活動

少しでも有利な処分(例えば「執行猶予」)を獲得できるように活動します。

また、否認事件では、冤罪を防止すべく被害者の方に記憶違いがないかの検証・弾劾活動及び弁護側独自で有利な証拠を収集・提出できるよう活動します。

 

風俗トラブルに関する事例と条例の説明

1 青少年の健全な育成に関する条例

金銭を払わなかったとしても18歳未満の児童と性交に及んだ場合は、各都道府県の青少年健全育成条例違反が問題となります。相手の年齢が18歳未満であり、かつ行為時にその事情を知っていた必要があります。

なお、令和5年の刑法改正により、16歳未満の児童と性交やわいせつ行為をした場合には、対象児童との年齢差によっては、不同意性交等や不同意わいせつ罪として始末されることになりました。

 

2 迷惑防止条例

例えば、「町で声をかけた女性の体を触るなどした」場合、迷惑行為防止条例違反に問われる可能性があります。

法定刑は各都道府県の条例に規定されていますが、例えば、6か月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金刑が定められています。

 

3 ぼったくり防止条例

例えば、キャバクラ店で,客の男性に「金払えなかったら射殺する」などと言って高額な飲食代金を請求する場合が挙げられます。

「ぼったくり防止条例」は、正確には「性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例」(条例の名称は各都道府県によって若干異なります)と言います。

都道府県公安委員会が指定する地域で営業されている飲食店や性風俗営業における「料金等の表示義務」「不当な勧誘等の禁止」「不当な取立ての禁止」について規定しています。

 

風俗トラブルに関する条例違反の弁護活動

1 示談

被害者と示談を行い、軽い処分を目指します。

 

2 取調対応・身柄解放活動

弁護士が接見に赴き、嘘の自白調書やニュアンスが違った調書が作成されないようアドバイスします。

また、逮捕・勾留されてしまうのは、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるためです。そこで、弁護士は早期釈放・早期保釈のために証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを示す客観的証拠を収集し、社会復帰後の環境を整備するなどして釈放や保釈による身柄解放を目指します。

 

3 調査と処分交渉

否認事件では、独自に事実調査を行うとともに、不起訴に向けて検察官に働きかけを行います。

 

4 公判準備活動

少しでも有利な処分(例えば「執行猶予」)を獲得できるように活動します。

 

また、否認事件では、冤罪を防止すべく被害者の方に記憶違いがないかの検証・弾劾活動及び弁護側独自で有利な証拠を収集・提出できるよう活動します。

 

風俗トラブルでお困りの方は、いつでも弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。風俗トラブル事件に精通した弁護士が、「無料相談」を行います。逮捕された事件の場合、最短当日に、弁護士が直接本人のところへ接見に行く「初回接見サービス」もご提供しています。

 

2025年風営法改正と事業者への影響

2025年5月、悪質な営業行為の規制を柱とする「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」が国会で全会一致で可決・成立し、同月28日に公布されました。改正法の施行日は公布日から起算して1か月後の2025年6月28日であり、一部の規定(後述の欠格事由追加)は公布日から6か月後の2025年11月28日施行と定められています。

 

改正の概要(改正点一覧)

改正風営法の主な改正点は以下のとおりです。

  • 接待飲食営業に関する遵守事項の追加(ホストクラブ・キャバクラ等への新たなルール)
  • 接待飲食営業に関する禁止行為の追加(悪質行為の明確な禁止と罰則化)
  • 性風俗店(性風俗関連特殊営業)におけるスカウトバックの禁止(違法な人材募集ルートの遮断)
  • 無許可営業等に対する罰則の強化(罰則の引き上げと適用範囲の拡大)
  • 風俗営業許可の欠格事由の追加(許可を受けられない者の要件拡大)

以下、各項目について改正内容を具体的に解説します。

 

1 接待飲食営業※に係る遵守事項の追加

※接待飲食営業=設備を設けて客の接待をし、客に遊興または飲食をさせる営業(典型例:キャバクラ、ホストクラブ等)。風俗営業の一種(風営法2条1項1号営業)。

改正法は、ホストクラブやキャバクラなど接待を伴う飲食店営業に対し、新たに遵守事項を追加しました。ガールズバー、ボーイズバー、コンカフェなどで「接待」する場合も対象になります。これらは従来明文化されていなかった悪質な勧誘・接客行為を禁止するものです。

具体的には以下の3点が新たな遵守事項として規定されました。

  • 料金に関する虚偽の説明の禁止:
    料金体系や請求額について事実と異なる説明をしたり、誤認させる説明をする行為。
  • 客の恋愛感情等につけ込んだ勧誘の禁止:
    客が接客従業者(ホスト・ホステス等)に抱く好意や恋愛感情を悪用し、「自分と恋人関係になれる」「一緒にいたいならもっとお金を使って」等と信じ込ませて巧みに高額な飲食をさせる行為。
  • 客が注文していない飲食物等の提供禁止:
    客が明確に注文の意思表示をしていないのに飲食やシャンパン等を提供し、後から料金を請求する行為。いわゆる勝手注文(無断で高額ボトルを開けて料金に加算する等)の手口が該当します。

以上の遵守事項違反は刑事罰の対象ではありませんが、行政処分(営業停止処分や許可取消し等)の原因となり得ます。接待飲食業者は店内ルールやスタッフ教育を見直し、料金表示の明確化や営業トークの指導などを通じて、これら禁止行為を徹底的に避ける必要があります。

 

2 接待飲食営業に係る悪質行為の明確化・罰則化

上記遵守事項とは別に、ホストクラブやキャバクラ等の営業者による特に悪質な行為については、改正法により「禁止行為」として新設され、刑事罰の対象となりました。ガールズバー、ボーイズバー、コンカフェなどで「接待」する場合も対象になります。禁止行為には以下の二点が該当します。

  • 威迫による注文・支払強要の禁止:
    客に注文させる目的や、未払い金の支払等をさせる目的で威迫して困惑させる行為が禁止されました。
  • 売掛金回収のための違法行為強要の禁止:
    未払い料金等を支払わせる目的で、客に対し威迫または誘惑して次のような行為を要求することが禁止されました。「誘惑して…要求すること」も禁止されており、誘い文句であっても違法となります。

    • 違法行為による金策の要求:
      「法令違反となる手段で金を作って来い」と唆すこと。
    • 売春の要求:
      売春防止法その他の法令に違反する売春行為(国内外問わず)をするよう要求すること。
    • 性風俗店で働くよう要求:
      改正法の対象とする性風俗関連営業(後述)で異性の客に接触するサービス提供業務に従事することを要求すること。
    • アダルトビデオ出演の要求:
      被害防止のA V新法(AV出演被害防止・救済法)で定義される性行為映像の制作物への出演をするよう要求すること。
      例:「AVに出て借金を返せ」と出演強要。

これらの禁止行為に違反した場合、風営法違反の刑事罰が科されます。

具体的な罰則規定としては、6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又は併科となっています。

改正前から、売春を強要した場合は売春防止法違反等で摘発され得ましたが、改正風営法ではこれら一連の悪質行為そのものを風営法上明確に禁じ、独自に罰則を設けることで包括的かつ迅速な取締りを可能としています。接待飲食業の経営者は改正内容を十分に周知し、従業員によるこの種の行為を絶対に行わないよう厳格に指導・管理することが求められます。

 

3 性風俗店によるスカウトバックの禁止

改正法は、デリバリーヘルス等の性風俗関連特殊営業(いわゆる風俗店)における人材スカウト行為にもメスを入れました。具体的には、性風俗店の経営者がスカウトマン等から求職者(働き手)の紹介を受けた際に、その紹介者(スカウト)や第三者に対し、紹介の対価として金銭等を支払うことを禁止しました。いわゆる「スカウトバック(紹介料キックバック)」の禁止規定であり、違反した場合は6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又は拘禁刑と罰金の併科が科されます。

なお、このスカウトバック禁止規定は性風俗店(風俗第2条第6項・第7項該当業種)に限って適用されます。ホストクラブやキャバクラ等の接待飲食業は含まれません。また紹介料とみなされるもの全般が禁止対象のため、仮に従業員の友人紹介であっても金銭や商品券等の謝礼を渡すことはNGとなり得ます。性風俗店の経営者は、自店舗の採用方法を速やかに見直し、報奨金付き紹介制度やスカウト業者への依頼を廃止する必要があります。

 

4 無許可営業等に対する罰則の強化

改正法は、風俗営業等を無許可・不適切な形態で営んだ場合の罰則を大幅に引き上げています。風俗営業には警察署経由で公安委員会からの許可が必要ですが、無許可で営業したり、許可証の名義を他人に貸して実質的に営業させる「名義貸し」行為は後を絶ちませんでした。

改正法では、こうした無許可営業・名義貸しに対する法定刑を以下のように強化しています。

  • 個人に対する罰則強化:
    無許可営業等を行った者への罰則が5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金又は拘禁刑と罰金の併科に引き上げられました。従来の「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」から拘禁刑の上限が2.5倍、罰金額の上限は5倍となり、抑止力が高められています。
  • 法人に対する罰則強化(両罰規定):
    風俗営業関連の違法行為について、従業員や代表者だけでなく法人も処罰される両罰規定があります。改正法では法人に科される罰金の上限額が「200万円以下」から「3億円以下」へと大幅引き上げられました。企業として違法営業の経済的メリットが失われる水準であり、法人ぐるみの違法経営に強い歯止めをかける狙いがあります。

「風俗営業」が対象なので、パチンコ屋やゲームセンターなども対象となるほか、深夜酒類提供飲食店営業の届出で営業をしているガールズバー、ボーイズバー、コンカフェなどが「接待」をしたとして逮捕・摘発される場合にも適用されます。「風俗営業」が対象なので、「性風俗関連特殊営業」であるソープ、ハコヘル、デリヘルなどの風俗店には適用されません。

さらに、今回の罰則強化は適用範囲の拡大も含んでいます。例えば、改正法の新罰則規定では風営法28条に基づく都道府県条例違反(禁止区域内での営業など)も重い処罰対象に含まれました。これにより、従来グレーとされてきた無届の「マンション型メンズエステ」(実態は性的サービス提供だが風俗営業の届出や許可をせず、禁止区域で営業するケース)なども、無許可営業と同様の厳罰で取り締まることが可能になります。

また、他人名義の許可で営業する名義貸しも実質的には無許可営業とみなされ、同様に5年以下の拘禁刑/1,000万円以下の罰金の対象として厳しく追及されます。

風俗関連事業者は、自社の営業形態が許可範囲から逸脱していないか再点検する必要があります。例えばガールズバー等で実質的に接待行為をしている場合、従来より格段にリスクが高まっています。許可が必要な営業は必ず事前に取得し、許可範囲外の営業形態(接待の有無、深夜営業時間など)を行わないことが肝要です。

また、名義貸しによる営業や、風俗営業禁止区域での偽装営業(例:無届けの出張エステで実質デリヘル行為を行う等)は、発覚すれば経営者個人も法人も破滅的な制裁を受ける可能性があります。改正法施行後は、グレーな営業スキームに安易に手を出さず、許可・届出を含む行政手続を厳密に遵守する姿勢がこれまで以上に求められます。

 

5 俗営業許可に係る欠格事由の追加

最後に、風俗営業の許可を取得できない者(欠格事由)の範囲が拡大されました。改正前から、暴力団員や禁錮刑受刑者、過去に許可取消処分を受けて5年経過していない者などは許可が下りない規定がありました。

改正法では新たに以下のケースが追加されています。

  • (1)親会社等が許可取消処分を受けた法人:
    申請法人の親会社その他密接な関係会社が、過去5年以内に風俗営業許可を取消されている場合、その申請法人には許可が下りません。
    例えば、グループ内の別会社が悪質営業で許可取消となっているのに、社名を変えただけの新会社で営業再開といった看板掛け替えを防ぐ規定です。「親会社等」の範囲は国家公安委員会規則で定められますが、株式保有や役員の派遣等を通じて実質的に事業を支配している関係があれば該当すると考えられます。
  • (2) 立入調査後に許可証を返納した者
    風俗営業所への警察の立入り調査を受けた後、その処分が確定する前に自主的に許可証を返上(返納)した者も、新たな許可申請ができない者に追加されました。
    これは、いわゆる処分逃れを防止するための規定です。従来、重大な違反で取消処分が見込まれる事案で事業者が先に許可を返納すると、形式上「取消された」経歴が残らず、しばらくしてから再申請できる抜け穴が指摘されていました。改正法では警察による立入調査後~処分決定までの期間に許可を返納した場合も欠格事由にカウントされます。実質的に取消と同等とみなして5年間の申請禁止となるため、この手法は通用しなくなります。
  • (3) 暴力的不法行為者に支配されている者:
    申請者(営業者)の事業活動に関し、暴力的な不法行為等を行うおそれがある者が支配的な影響力を及ぼしている場合も許可不可となります。
    これは、反社会的勢力が表面上関与していなくても、資金提供や取引を通じて裏で経営に影響力を持つケースを排除するものです。暴力団排除の趣旨を徹底する規定で、フロント企業や周辺者を使った関与も許さない内容と言えます。

以上の欠格事由拡大は、2025年11月28日以降の許可申請から適用されます。

風俗営業の新規許可を検討する事業者は、自社および関連会社の過去の行政処分歴や、主要株主・出資者の背後関係を十分洗い直す必要があります。

特に(1)については、グループ内に取消歴がある場合5年間は新規参入ができない可能性があります。

また(2)について、今後は「摘発されたら一旦店を畳んで逃げる」という逃避策は許可再取得不能という重い代償を伴います。違反の疑いを指摘された際には、安易に返納や廃業で逃げようとせず、真摯に改善策を講じることが肝要です。

(3)については、例えば事業に資金提供している人物が反社的風評のある人物でないか、役員や実質的経営者が過去に暴力的違法行為を起こしていないか等、身辺整理を求められるでしょう。場合によっては出資関係の見直しや経営陣の交代も検討すべきです。

 

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